世界における『易経』の流派と易法
六十四卦を通して変化の理を読み解いてきた三千年の歴史を一つのライブラリに集約。漢代の象数・義理学派から道教の内丹術、武術の八卦掌、韓国の四象医学、日本の江戸易学、ベトナムの寺院伝統、二進法の着想となった西洋の解釈まで、各伝統の歴史・手法・哲学を52言語でご覧いただけます。
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- 流派・伝統
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- 対応言語
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- 年の歴史
流派で探す
同じ六十四卦でも、時代や東アジアの地域によって多様に解釈されてきました。関心のある伝統から探求を始めましょう。
象数派(象数易)
漢代を風靡した数理的解釈。孟喜や京房らの学者は「卦気」や「納甲」などの体系を通して卦を暦、五行、十干と結びつけ、宇宙を解読可能なシステムとして捉えました。
義理派(義理易)
漢代の象数易に対する哲学的な反論。王弼は「得意忘象(義理を得て象を忘る)」を唱え、後に程頤や朱熹がこれを新儒術(宋学)や科挙試験の根幹へと高めました。
道教・内丹術
卦を人体構造の設計図として読む伝統。『周易参同契』に基づき、体を炉に見立て、六十四卦の運行を体内で不老不死の霊胎を育てる「火候」の指標として用いました。
八卦掌
易経の原理を身体化した中国武術。董海川は円周上を走る歩法と、八卦に対応する八つの「母掌」を創始し、陰陽の流転と変幻自在の動きを体現させました。
韓国の周易(Juyeok)
朝鮮時代の思想と医学の中心。退渓(李滉)や栗谷(李珥)が理気論を戦わせ、李済馬は四象医学を創始、金一夫は『正易』にて後天開闢の予言として再構築しました。
日本の易学(江戸・明治易)
禅僧によって渡来後、官学へ。山崎闇斎は垂加神道で神道と易を融合させ、明治期には高島嘉右衛門(高島易断)が筮竹で国政や近代化事業を助言しました。
ベトナムの易(Kinh Dịch)
預言・政治・宗教と深く結びついた伝統。賢者グエン・ビエン・キエムが詩文の卦で戦国武将に助言を与え、20世紀の国旗やカオダイ教の建築にも八卦が刻まれています。
西洋における受容
西洋思想に強い影響を与えた構造的マトリクス。伏羲八卦図がライプニッツの二進法着想の一助となり、ユングはシンクロニシティの概念へと発展させました。
易法・手法で探す
筮竹、コイン、立て卦など、易経は多種多様な方法で立てられ、活用されてきました。目的に適した易法を見つけてください。
筮竹法(本筮法・中筮法)
古来の易法50本の筮竹を操作する最も古く伝統的な易法。確率の計算上、陽爻の変爻が陰爻の変爻より3倍生じやすく、天の動的な性質を表すとされました。
コイン易・略筮法
簡便な手法3枚のコインを投げる高速な手法。確率は均等化されますが、伝統的な確率差を再現するために特殊なコインやカードを用いる試みも行われています。
六爻占術(文王卦)
五行の構造分析京房の系譜を引くシステム。卦辞を使わず、世爻・応爻、六親(父・兄・子・財・官)、干支、空亡などを立体的に配して吉凶や時期を詳細に分析します。
梅花心易
観象・時空の卦邵雍(邵康節)に由来する道具を使わない易法。時刻、物体の数、色、鳥の羽ばたきなど目の前の現象から卦を立て、体用(自分と相手)の均衡から読み解きます。
十翼(卦辞・爻辞の解説)
易の哲学書孔子が著したと伝わる10の解説書。単なる占いの書であった周易を、自然界と人間社会の法則を説く普遍的な宇宙論・道徳哲学へと昇華させました。
八卦と六十四卦
64の象徴図形陰陽の二爻を3つ重ねた「八卦」をさらに2つ重ねて作られる「六十四卦」。之卦(変卦)や互卦を見ることで、静止した状態ではなく常に変化し続ける状況を捉えます。
卦気説と暦学
宇宙の時節漢代に発達した、六十四卦を二十四節気や365日に当てはめる宇宙時計。気象や季節の移り変わり、国家の運気を予測するために活用されました。
四象医学・韓医学
体質と養生李済馬が創始した韓国独自の医学。人を太陽・太陰・少陽・少陰の4体質に分類し、臓腑の強弱に応じた処方を行うことで、体質別の治療を実現しました。
経世済民と予言
帝王学と遠謀政治家や軍師の指南書としての易。グエン・ビエン・キエムの未来予言から高島嘉右衛門の明治政府助言、国旗への八卦採用まで、歴史の決定の場で用いられました。
二進法とシンクロニシティ
現代科学との共鳴ライプニッツの二進数、ユングの共時性(シンクロニシティ)、そしてDNAの64のコドン(遺伝暗号)との構造的相致など、現代科学や心理学との響き合い。
変化を読み解く一冊の書
『易経』(周易)は単一の著作ではなく、長い歴史の中で層をなして形成された古典です。その中核をなすのが、陽(実線)と陰(破線)の6本の爻を積み重ねた「六十四卦」です。伝説では文化英雄である伏羲が亀の甲羅の模様から最初の八卦を描いたと伝えられています。最も古い層である「周易」は、西周時代に筮竹を用いて問いに答える素朴な占いの書でした。後に孔子が著したと伝わる「十翼」と呼ばれる一連の注釈が加わることで、単なる占術を超えた宇宙論へと発展しました。根底に流れるのは、陰と陽の交替、Qi(気)の流動が万物を生み出し、絶えず変化することこそが唯一の不変の真理であるという思想です。
二大流派:象数派と義理派
漢代になると、易学は大きく二つの流派に分かれました。「象数派」は、卦を太陽暦や五行、十干十二支と結びつけ、気象や国家の運命を予測する精密な数理モデルを構築しようと試みました。孟喜や京房らが創始した「卦気説」や「納甲」はその代表例です。これに対し、3世紀に王弼が興した「義理派」は「得意忘象(義理を理解したら象形に囚われるな)」と唱え、易を道徳や人間の生き方の指標として読み解きました。宋代になると程頤や朱熹が両者を統合し、朱子学のテキストとして科挙試験の必修科目となりました。
卦を立てる:筮竹とコイン
伝統的な易の立て方は「本筮法」と呼ばれる筮竹を用いる方法です。50本の筮竹から1本を太極として取り置き、残りを操作して6、7、8、9の数値を算出します。この確率計算には深い哲学が込められており、動的な「老陽(9)」が出る確率は「老陰(6)」の3倍高く設定されています。これは能動的な天の力が変動しやすいという古代の宇宙観を反映しています。後に簡便なコイン3枚の「略筮法」が広まりましたが、確率は均等化されるため、古代の確率差を再現するために特殊なコインやカードを用いる工夫もなされています。
六爻占術と梅花心易
漢代の京房の理論からは、後に「六爻占術(文王卦)」と呼ばれる技法が生まれました。これは本文の卦辞を使わず、世爻・応爻、六親(父母・兄弟・子孫・妻財・官鬼)、空亡などを干支と組み合わせ、具体的な吉凶や時期を立体的に捉える手法です。一方、宋代の邵雍が創始したとされる「梅花心易」は道具を一切使いません。時刻や物の数、鳥の羽ばたきなど、目の前の現象から即座に卦を立て、自己と環境の調和関係から状況を解読します。
身体という炉:道教の内丹術
陰陽の理を追求する易経は、道教の錬金術(アルケミー)とも融合しました。2世紀の魏伯陽による『周易参同契』は、易経・黄老思想・錬丹術を統合した金字塔です。外丹術が鉱物を精錬したのに対し、内丹術は人間の身体そのものを炉に見立てました。気や精を体内で精錬し、六十四卦の運行を「火候」と呼ばれるプロセスの指標として用いることで、体内に不老不死の霊胎を育てることを目指しました。
動き出す八卦:八卦掌
易の哲学は、19世紀の中国で武術「八卦掌」として結実しました。創始者の董海川は、円周上を足を踏み変えながら歩く独特の歩法と、八卦に対応する八つの「母掌」を開発しました。相手の力に対して真っ向からぶつかるのではなく、円運動によって受け流し、変化し続けることで制します。八卦掌の施術者は、理論として易を学ぶだけでなく、身体全体で陰陽の流転を体現しています。
朝鮮半島:医学と後天開闢
儒教を国教とした朝鮮王朝において、『周易』(Juyeok)は思想の中心でした。李退渓と李栗谷は理気論を巡って論争を繰り広げました。19世紀末、李済馬は易の四象に基づき、人の体質を4つに分類して治療する「四象医学」を創始しました。また、金一夫は『正易』を著し、これまでの抑陰尊陽の時代から陰陽調和の新しい世界(後天開闢)が到来するという予言的哲学を展開しました。
日本:禅から江戸易・高島易へ
日本には京都五山の禅僧によって易がもたらされ、仏教と儒教の融合として親しまれました。江戸時代に入ると徳川幕府の官学となり、山崎闇斎は神道と易を結合させた「垂加神道」を唱えました。明治時代には、牢獄の中で易を修めた高島嘉右衛門(高島易断)が筮竹を用いて政界や実業界に的確な助言を与え、日本の近代化に大きく貢献しました。
ベトナム:詩文・国旗・カオダイ教
ベトナム(Kinh Dịch)でも、易は政治や宗教と深く関係してきました。16世紀の賢者グエン・ビエン・キエムは卦を詠んだ暗号詩で武将たちを導きました。20世紀には、1945年のベトナム帝国の国旗に離卦(火)が、後のベトナム共和国の国旗に乾卦(天・三つの地域の統一)が描かれました。さらにカオダイ教の総本山(タイニン)は八卦を模した八角形の建築となっており、宗教的象徴として生き続けています。
西洋との遭遇:二進法と心理学
ヨーロッパに易経が紹介された際、単なる迷信ではなく高度な構造として受け入れられました。1701年、宣教師ブーヴェから伏羲八卦図を受け取ったライプニッツは、自らが開発中だった二進数(0と1)の構造が易の陰陽(破線と実線)と完全に一致することに驚喜しました。20世紀には心理学者ユングが「シンクロニシティ(共時性)」の理論を深めるために易経を活用しました。さらに現代の分子生物学では、64の卦が遺伝暗号である64のコドンと対応していることが指摘されています。
このライブラリの活用方法
象数・義理・内丹・西洋受容などの学派の歴史をたどることも、筮竹・コイン・六爻占術・梅花心易・医学などの手法を比較することも可能です。タロットアカデミーが対応する52の言語で、ご自身の思考言語に合わせて『易経』の知恵を学ぶことができます。
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