沢水困
困 · Kùn
沢の下から水が漏れ出し、干上がっている姿です。この卦が説くのは消耗と困窮であり、自らの言葉が信じてもらえないという特有の苦しみを伝えています。
卦辞
困は亨る。貞、大人なれば吉、咎なし。言うことあれども信ぜられず。
最後の句こそが、この卦を特別なものにしています。困難は単に物質的なものにとどまらず、自らの訴えが誰にも聞き入れられないという点にあります。
象辞
沢に水なきは、困なり。君子以て命を致し志を遂ぐ。
この書物の中でもっとも峻烈な象辞です。状況が何も与えてくれないとき、最後に残るのは、自らがどう生きると定めたかということだけです。
この卦の意味
困とは消耗と行き詰まりであり、この書の中でもっとも過酷な卦です。沢に水がない情景は、器だけが残り、その中身が失われてしまった姿を示しています。
この卦の際立った特徴は、卦辞の結びの一句にあります。「言うことあれども信ぜられず」。この卦が語るのは単に困窮していることだけではなく、困窮の最中にあって自らの言葉がまったく信用されないという事態です。古典はこれこそを、この境遇が持つ特有の非情さであると見定めています。
象辞は、この書物全体の中でもっとも極限に達した言葉でそれに応えています。「君子以て命を致し志を遂ぐ」。外の状況が何も与えてくれなくなったとき、残されているのは自分が何者であると決めたかという一点のみであり、古典は命を賭してでもそれを貫けと説くのです。
第三爻は『繋辞伝』において、困難への処し方を誤った典型として引用されています。「石に困しみ、蒺藜に据り、その宮に入りてその妻を見ず」。頼りにしようと選んだ支えが、次から次へとことごとく裏目に出てしまう姿です。
そして上爻において、卦は転換を迎えます。葛藟に絡め取られ、動けば悔いがあると自分に言い聞かせて立ちすくむところを、経文は悔いを恐れずにまず踏み出せと告げます。幸いは周到な計画からではなく、とにかく始めることから訪れるのです。
占断において
占断の答えとして沢水困が出たときは、深刻な消耗を告げています。手持ちの資源は尽き、選択肢は狭まり、自らの置かれた状況を説明しても真剣に受け止めてもらえません。
その助言は、策を弄することではなく耐え忍ぶことです。軽々しく進み出ず、理解されることを期待せず、自らの規矩を守りながら時を待ちます。金縛りのような停滞に陥ったときに従うべきは上爻の教えです。不恰好であってもまずは踏み出すことで、物事は再び動き始めます。
六つの爻
爻の文は、占いでその爻が変爻となったときにのみ読みます。ここでは卦が描かれる順に、図の上から下へと並べてあります。
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上六
葛藟に困しみ、臲卼たり。「動けば悔いあり」と曰うも、悔ゆることあれば征きて吉なり。
引きちぎることのできるはずのつる草に絡め取られています。躊躇は自らを縛り上げるばかりであり、その打開策はただ踏み出すことだけです。
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九五
劓刖さる。赤紱に困しむ。乃ち徐ろに説かるることあり。用て祭祀するに利あり。
権力による過酷な処罰を受け、その後、理由は語られぬままゆっくりと解放へと向かいます。古典が勧めるのは権謀術数ではなく祈りです。
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九四
来ること徐徐たり、金車に困しむ。吝なれども終りあり。
安楽のただ中に潜む不自由です。歩みは遅く恥ずかしい思いもしますが、やがて終わりを迎えます。
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六三
石に困しみ、蒺藜に据る。其の宮に入りて其の妻を見ず。凶なり。
古典が別の箇所で、頼るに足らないものにしがみついて困窮する典型として引く爻です。選ぶ支えのすべてが誤っています。
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九二
酒食に困しむ。朱紱まさに来たらんとす。用て享祀するに利あり。征けば凶にして、咎なし。
豊かさの只中にありながらの閉塞です。助けは向こうからやって来るのであり、こちらから焦って迎えに行けば台無しになります。
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初六
臀、株木に困しみ、幽谷に入る。三歳見ず。
卦の最下層であり、境遇のどん底です。三歳(三年)とは、ひたすら耐えてやり過ごさねばならない時間の長さを表す古典の尺度です。
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