雷沢帰妹
歸妹 · Guī Mèi
側室として他家に嫁ぐ少女の姿を描き、易経のなかでもっとも厳しいとされる卦です。正当な立場や権利のないまま関わりに入ることの危うさを説いています。
- 文王の卦番号
- 64卦中の54番
- 上卦
- ☳ Zhèn · 雷
- 下卦
- ☱ Duì · 沢
- 構成
- 沢の上に雷
- 爻(下から上へ)
- 陽 · 陽 · 陰 · 陽 · 陰 · 陰
- 漢字
- 歸妹 · Guī Mèi
卦辞
征けば凶。利ろしき攸なし。
易経のなかでももっとも厳しい卦辞です。古典はこの峻厳さを少しも和らげず、そのうえで残された六本の爻を通じて、なお何がなし得るのかを探り出していきます。
象辞
沢の上に雷有るは帰妹。君子以て終わりを永くし、敝れを知る。
ここで提示される唯一の救いは、困難のただ中にありながら、結末を含む全体の推移を冷静に見通すことにあります。
この卦の意味
帰妹は、易経のなかで好意的に読み解くことがもっとも難しい卦であり、そもそも寛大に読まれることを意図していません。卦辞にある「征けば凶、利ろしき攸なし」という断言は、他のどこにも見られないほど率直で厳しいものです。
ここで描かれる状況は、正当な足場のない立場から関係や取り決めへと入っていくことです。正式な婚儀を経ず、固有の権利も持たないまま、側室として婚家に送り込まれる妹の姿がそれにあたります。古典は当時の現実的な社会状況を描き出し、それを対等な基盤を持たずに下位から参入するあらゆる事態の象徴として用いています。
状況の厳しさを宣告したうえで、易経はなお何が可能であるかを探り当てます。足が不自由でも歩くことはでき、片目であっても見ることはできます。初九と九二の二爻は、自らの限られた能力を実際の制約のなかで誠実に用いることに吉を与えており、これこそがこの卦の実際的な教えです。
第五爻がその手本を示します。天子の娘が嫁ぐ際、その袂は付き添いの侍女の衣服よりも質素でした。華美に振る舞う資格を持ちながらあえて自制すること、そして満月の一歩手前である「月ほぼ望」の象は、この書物において常に「最後の限度まで押し通そうとしてはならない」という戒めを意味します。
最上爻は、形式だけが残り実質が失われたときの姿を描きます。中身のない籠を捧げ、血の流れない羊を供え物にしても、そこには実質が伴いません。
占断において
占断において答えとして現れた帰妹は、強い戒めとなります。正当な足場のない立場から何かに足を踏み入れ、条件を自ら決めることができない状況を指し示しています。
この卦の助言は、自制を保ち、自らの限界を率直に見極めることにあります。この位置から野心的な企てを起こしてはならず、手元にある能力を過不足なく活かすべきです。また九四の爻が当てはまるかどうかも考慮に値します。然るべき時機が訪れるまで待つことは、古典によって明確に許容されています。
六つの爻
爻の文は、占いでその爻が変爻となったときにのみ読みます。ここでは卦が描かれる順に、図の上から下へと並べてあります。
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上六
女は筐を承げて実無く、士は羊を刲きて血無し。利ろしき攸なし。
中身のないまま執り行われる儀礼の姿です。形式ばかりが残り、実質が失われた状態を古典は鮮やかに描き出しています。
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六五
帝乙、妹を帰がす。其の君の袂、其の娣の袂の良きに如かず。月ほぼ望、吉。
自らの身分よりも控えめな装いを選ぶ貴婦人の姿です。この卦でもっとも好ましい爻であり、その徳は徹底した自制にあります。
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九四
帰妹、期を愆ぐ。遅く帰ぐに時あり。
安易な妥協を拒む姿勢です。古典は時機の遅れを明確に許容し、然るべき時が巡り来ることを示しています。
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六三
帰妹するに須を以てす。反りて帰ぐに娣を以てす。
より良い条件を望んで待ちながら、結局は低い地位を受け入れることになります。爻辞はその顛末を過不足なく記録しています。
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九二
眇能く視る。幽人の貞に利あり。
不完全な視力であっても、偽らずに用いることです。ここでの静かな独居は、喪失ではなく受け入れ可能な生き方として肯定されています。
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初九
帰妹するに娣を以てす。跛能く履む。征けば吉。
もっとも低い立場にありながら、この爻はその中に吉を見出しています。限られた能力であっても、その分限のなかで用いるならば成果を得られます。
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