水火既済
既濟 · Jì Jì
すべての爻が本来あるべき正しい位置に収まっている唯一の卦。易経はこの完全さを、崩壊が始まる直前の瞬間として捉えます。
卦辞
小事に亨る。貞に利ろし。初めは吉にして、終りには乱る。
全書の中で最も整った配置を持つ卦に与えられた卦辞が、乱れをもって結ばれます。易経は完成を安住の地とは見なしません。
象辞
水火の上にあるは既済。君子もって災患を思いてあらかじめこれを防ぐ。
成功の絶頂において、失敗に備えるよう命じられます。これほど冷徹で実践的な教えは他に類を見ません。
この卦の意味
既済の構造はきわめて独特です。すべての陽爻が陽の位に、すべての陰爻が陰の位に就き、六爻すべてが正当な位置を得ており、二爻と五爻は中を得ています。易経のどの卦も、これほど見事に整ってはいません。
古典がこの完全さに下した判断は、強い警告でした。初めは吉、終りには乱る。すべてが正しい位置にあるとき、次に進む道は崩れゆく方向しかありません。そのため象辞は、完成の瞬間こそ何が悪化するかを予見し、対策を講じるべきだと君子に説きます。
四爻はその戒めを具体的に示します。最上の絹の衣もぼろ切れとなり、一日中警戒を怠るなと教えます。突発的な危機を待つのではなく、不断の注意を保つことが求められます。完成したものの衰退は、自ら告げることなく静かに忍び寄るからです。
五爻は易経が好む対比に立ち返ります。牛を屠って盛大に祀る隣人よりも、ささやかな供え物を捧げる隣人の方が真の福を受けます。計られるべきは規模の大きさではありません。
そして最後の爻は、無事に渡り終えたはずの川で頭を水に濡らしてしまう過ちを描き出します。
占断において
占断において既済が出た場合、物事が整い、機能し、成就した状態を表します。本来は慶事ですが、この卦は全編を通じて油断を戒めます。
その助言は保全と深謀遠慮にあります。これから何が綻びるかを今見極め、平穏なときこそ気を引き締め、最後の最後で慎重さを失わないこと。上爻は、完結したはずの歩みの最後のひと踏みに対する鋭い警告です。
六つの爻
爻の文は、占いでその爻が変爻となったときにのみ読みます。ここでは卦が描かれる順に、図の上から下へと並べてあります。
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上六
その首を濡らす。危うし。
渡り終えた達成の直後に度を越して驕ること。このわずか数文字をもって卦は閉じられます。
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九五
東隣の牛を殺すは、西隣の禴祭のまさにその福をうくるに如かず。
大いなる犠牲よりも小さな真心の供物が勝る。形式の誇大さよりも真実の誠意が尊ばれます。
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六四
襦に袽あり。終日戒む。
最良の衣服にぼろが混じる兆し。一過性の騒乱ではなく、終日不断の警戒が求められます。
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九三
高宗鬼方を伐ち、三年にしてこれに勝つ。小人を用いるなかれ。
三年にも及ぶ遠征の歴史。古典の眼目は、事後に誰を重用し信を置くかという点にあります。
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六二
婦人その茀を喪う。逐うなかれ、七日にして得ん。
失われたのは車を覆う帳であって、実質ではありません。七日の巡りがそれを自ずと戻します。
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初九
その輪を曳く。その尾を濡らす。咎なし。
渡河の端緒において歩みを緩めること。秩序を保つために小さな濡れを受け入れます。
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