護符 · 素材

赤珊瑚

別名: Corallium rubrum、血赤珊瑚

地中海の海底から引き揚げられた赤い骨格。二千年にわたり、赤子を守るために身につけられてきた物質です。

ひと目でわかる

生物種
Corallium rubrum(地中海産赤珊瑚)
正体
群体生物が形成する炭酸カルシウムの骨格
神話
海水中で凝固したメドゥーサの血
代表的な用途
乳児の護符や歯固め
描かれた作例
ルネサンス期イタリア絵画に描かれた幼子キリスト
現状
極めて成長が遅く、採取制限があり、模造品が多数流通

赤珊瑚の正体

Corallium rubrum(地中海赤珊瑚)は、炭酸カルシウムからなる硬い樹枝状の骨格を形成する群体生物です。カロテノイド色素によって鮮やかな赤から桃色に染まります。地中海の岩がちな海底に生息し、1年にわずか数ミリメートルという極めて遅い速度で成長しながら、数十年にわたって生き続けます。

潜水者が海底から引き揚げるのはその骨格部分です。磨き上げると深みのある赤の光沢を放ち、加工にも適しています。鉱物学的な意味での石や宝石ではなく、もちろん植物でもありません。その曖昧な存在形態は古代から注目されていました。オウィディウスは水から引き揚げられると固まる植物と見なし、テオプラストスや大プリニウスもまた、これをどの分類に収めるべきか頭を悩ませました。

メドゥーサの血

オウィディウスの『変身物語』は、珊瑚の起源をめぐる物語を伝えています。メドゥーサを討ち取ったペルセウスは、切り落としたその首を波打ち際の海藻の上に置きました。海藻は首から放たれる力を吸い取って石のように硬化し、赤珊瑚へと変じました。海のニンフたちはその種を水中に撒き散らしたとされています。

この神話は、護符としての実質的な根拠を支えています。ここでの珊瑚は、生きとし生けるものを石に変えてしまうという、ギリシャ神話で最も恐ろしい眼差しに触れることで生じた物質です。石化をもたらす視線から生まれた物質こそ、悪意ある視線(邪視)から幼子を守るために首へ掛ける品として、まさに打ってつけでした。地中海の伝統は、珊瑚をまさにその論理に従って用いてきました。

古代ローマでは、乳児に珊瑚を身につけさせることが日常的に行われていました。大プリニウスは、子どもを守るために首へ掛けるものとして珊瑚を記録しており、この風習は中世を経てルネサンス期のイタリアへと途切れることなく受け継がれていきました。

ルネサンスのすべての赤子の首に

15世紀から16世紀のイタリア絵画には、赤珊瑚が数多く描かれています。数々の板絵において、幼子キリストは珊瑚の小枝や重厚な珊瑚のペンダントを身につけています。これは単なる装飾ではなく、当時の家庭で実際の赤子が身につけていた装いを画家たちがそのまま写し取ったものです。ピエロ・デラ・フランチェスカの作品はその最も明確な例であり、1474年頃の『セニガッリアの聖母』や、『ブレラ祭壇画(モンテフェルトロ祭壇画)』では、眠る幼子の喉元に見事な赤珊瑚のペンダントが提げられています。

これらの絵画に含まれる神学的な逆説には、深く考えさせられるものがあります。全能であるはずの神の子が、邪視を避けるための異教由来の民間護符を身につけているのです。当時のマルケ地方の家庭が、自らの赤子にそうしていたからにほかなりません。ここでの珊瑚は二重の役割を果たしています。眼前の妬みを退ける魔除けであると同時に、血のように赤い樹枝状の姿によって、将来の磔刑で流されるキリストの血を予告していました。ルネサンス期の人々は、その枝分かれした構造に植物だけでなく、肺や血管網の形象をも重ね合わせて見ていました。

銀の台座に磨かれた珊瑚の枝を固定し、鈴を取り付けた「珊瑚の歯固め」は、19世紀に至るまでヨーロッパの上流階級の育児室における定番の贅沢品でした。珊瑚の枝は魔除けであると同時に乳児が噛むための道具であり、銀の留め具には子守を呼ぶための笛や鈴が備え付けられていました。これらは現在も各地の美術館に収集・展示されています。

南イタリアのねじれた角のお守り「コルニチェッロ」は、この素材が現代へと受け継がれた姿です。伝統に忠実であろうとするならば、今なお本物の赤珊瑚で作られた角こそが本来の護符とみなされます。

環境保護をめぐる課題

地中海の赤珊瑚は古代から採取され続けてきた結果、現在は資源の枯渇が深刻化しています。1年に数ミリメートルしか成長しないため、一度採取された群落が人間の寿命の範囲内で再生することはありません。現在は漁獲枠、採取可能な最小サイズ、禁漁区などの厳格な規制が敷かれ、一部のサンゴ科(Corallium属)の国際取引はワシントン条約(CITES)によって制限されています。

安価に出回っている赤珊瑚の装飾品の多くは、この地中海赤珊瑚ではありません。染色されたトクササンゴ(バンブーコーラル)やカイメンサンゴ、珊瑚の粉末を樹脂で固めた練り珊瑚、さらには単なるプラスチックが、膨大な量「珊瑚」として販売されています。表示基準が緩やかであるため、故意の偽装という意識すらなく流通していることも少なくありません。

実用上の指針として、伝統的な本物の素材を求めるのであれば、生物種の学名と原産地を明示している信頼できる宝飾店から適正な価格で購入する必要があります。あるいは、現代の漁獲枠外にあるアンティーク品や受け継がれた装飾品を選ぶのも現実的な方法です。そもそも伝統が育んできた珊瑚の多くは、そうした時代を経てきたものなのです。

護符としての赤珊瑚の用い方

地中海における伝統的な育児習俗と、現代における留意点。

  1. 未研磨の小枝、あるいは研磨されたねじれた角の形状を選びます。枝の形状のほうが歴史が古く、ルネサンス絵画に描かれているのもこの姿です。
  2. 身につける際は銀の台座に留めます。これがイタリアやスペインにおける伝統的な仕立て方です。
  3. 邪視を避けるため、乳児の首元に提げるか、揺りかごにピンで留めて配置します。
  4. 赤さを保つように扱います。民間伝承では、色褪せたり白化して粉を吹いた珊瑚は、魔除けの力を使い果たしたものとみなされます。
  5. 酸、香水、超音波洗浄機を避けてください。主成分である炭酸カルシウムは酸に弱く溶けやすいうえ、珊瑚自体が非常に繊細です。
  6. 乳児に対しては琥珀と同じ安全基準を守り、誤飲や窒息の恐れがあるビーズ状のネックレスを赤子の首に巻いてはなりません。

カトリック圏のヨーロッパ全域において、赤珊瑚は洗礼の贈り物としても重宝されました。護符の中でも特に贈答の慣習が強い品であり、伝統的には代父母(ゴッドペアレント)から贈られるものとされていました。

振り返りの問い

  • 石化させる眼差しによって生み出された物質を、悪意ある眼差しに対抗するために身につける。この論理に納得を覚えるでしょうか。
  • 年に数ミリメートルしか成長しない種に依存してきた伝統です。素材が枯渇しつつある護符と、どのように向き合うべきでしょうか。
  • この伝統を受け継ぐ本物の赤珊瑚のほとんどは、今やアンティークです。代々受け継がれた護符は、新しく作られた品以上の重みを宿すでしょうか。

よくある質問

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